山善防災ラジオYTM-R100レビュー

個人的に防災ラジオのほぼ完成形だと思っている山善のYTM-R100について、レビューしてみる。

 

 

 

<はじめに>
まずは、本製品が防災ラジオのほぼ完成形だと思っている要素を挙げてみる。

 

・内蔵バッテリーに電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ)が使用されている
この手の製品の内蔵バッテリーには、ニッケル水素電池リチウムイオン電池がよく使用されているが、どちらも過放電に弱く、災害用持ち出し袋に数年単位で放置されることの多い防災ラジオでは、「何もしていないのに壊れた」という事態になりやすい。
電気二重層コンデンサであれば、過放電という概念自体存在しないようなものなので、長期間放置しても大丈夫なのが強み。
容量はちょっとしかないが、どうせ何十分も手回し発電する気力なんてないので、1〜2分ぐらいサッと回して都度使用するのにちょうどいい。

 

・バリコン式のアナログラジオであり、連続使用時間が長い
災害時は資源が限られ、いつまで続くか分からないため、連続使用時間が長いに越したことはない。
YTM-R100は単三乾電池2本で120時間も持つスタミナバッテリーであり、手回しでも1〜2分の発電でFMを40分程度使用することができる。
また、アナログラジオの特徴として、電圧が下がると音量が小さくなってくるが、ボリュームつまみを上げることで最後まで粘ることができる。
一定電圧以下で電池切れとなってしまうDSP(デジタル)ラジオにはない特徴であり、DSPラジオでは電圧不足で使えなくなった電池でも、まだ数十時間と使えたりする。
この特徴は電気二重層コンデンサと相性が良く、上記では40分程度と書いたが、60分近く使用することもできる。

 

・200gと軽めで小型
これはけっこう重要で、非常用持ち出し袋の中は救急道具や生活必需品、水や食料などでパンパンになってしまうため、比較的小型なのは高評価。

 

・防水(IPX4)も完備している
災害に悪天候は付きもののため、防水は頼りになる。

 

・それ以外にも、防災ラジオとしての基本はしっかり押さえてある

イヤホン出力

いつでもスピーカーで使えるとは限らないため必要。

モノラルだけど両耳鳴ってくれる。

ライト 室内灯としてなら使えるレベルで、駆動時間も長め。
サイレン 正直要らないが、個別スイッチとなっているため邪魔にはならない。
携帯充電 下記の通りほぼ役に立たないが、乾電池によるモバイルバッテリーモードがあるため、最低限のポイントは押さえている。
外部電源入力

USB MicroBを使用した内蔵バッテリー充電のこと。

手回し1〜2分で満充電になるため要らないが、疑似ACアダプター駆動できる。

 

ライトまではほぼ必須なのだが、意外にもこの基本が押さえてある製品はほとんどなく、
やれDSPタイプのせいで、連続使用時間や手回し発電効率が本製品の半分以下になっていたり、
やれオシャレ(笑)のために、モノラルなのにスピーカーが無駄に2個あったり、
やれ単四乾電池3本という仕様で、電池の使い回しを想定していなかったり、
やれ内蔵バッテリーを満充電にするのに、何十分も手回し発電するしかなかったり、
やれ防災を謳っておきながら防滴ですらなく、イヤホンジャックが上向いていたり、
やれ過放電しやすい仕様で、「何もしてないのに壊れた」というクレームの温床になったりしている製品ばかりなのが現状。
まぁ同社の製品には手回し発電付きワンセグテレビという世迷い物もあるが、防災ラジオはよくできていて、現時点で最適解だと思う。
筆者が最初に購入した防災ラジオであり、現在は実家にプレゼントしたが、普段使いとしてもよく使用していた。
そのため、使い心地や細かな仕様について以下にレビューしていく。

 

 

 

<外観>

正面

手回しハンドル、ラジオ周波数表示、スピーカーがある。

 

手回しハンドルを出したところ

手回しハンドルの奥に電源切り替えスイッチがある

 

天面>

ライトとサイレン、ラジオのバンド切り替えスイッチがある。

 

右側面

選局と音量つまみがある。適度な重さだが、あまり飛び出ていないため操作はし辛い。

 

左側面

ライトと防水カバー。

 

防水カバーを開けたところ

携帯充電、ヘッドホン出力、外部電源入力がある。

 

背面

アンテナは約30cmまで伸ばすことが出来る。
個体差かもしれないけど、電池蓋にツメがあるが小さく、カチッと閉まらないのが不満。
通常使用時に勝手に開いちゃうことはないだろうけど、何かのはずみで開いちゃいそうではある。

 

 

 

<手回し発電>
ハンドル部分は1.5cmぐらいしか長さが無いので、指先でつまむような形になる。
個人的には3本指でつまむのがおすすめ。
また、内蔵バッテリー充電中は結構重いため、ハンドルだけでなく本体も一緒に回すようにするといい。
回転数は1分間で120〜150回転ぐらいが推奨で、150回転ぐらい回すと急に軽くなる。
これが満充電の合図のため、そこまでは頑張ってみよう。

この製品に限らないが、5分も10分も回さないと充電できなかったとかいうレビューを見たけど、それは個体不良か回転数不足。
回転数がそのまま出力電圧に影響するため、推奨回転数通りに回さないと電圧不足でいつまでたっても充電できないことがある。
また、回転数が多過ぎても過電圧で故障する可能性があるため、推奨回転数通りに回すようにしよう。

 

 


<ラジオ>
ボリュームつまみがラジオ電源スイッチを兼ねている。
電源ON/OFFの際にポップノイズが乗るのはマイナスかな。
あと、音量調整は小音量域の変化が急で、触れるだけで音量が変わったりする。

 

音質については、中音域がメインで低音域と高音域が弱い。
まぁこのサイズのものはだいたいそうだし、聞き疲れないという方が重要なのでこれでいいだろう。
また、見た目によらず結構デカい音を鳴らせるが、1/3辺りから箱鳴りが起きる。
こうなると音割れ感も強くなってくるので、聞こえればいい程度だと思っておこう。

 

イヤホンはモノラルながら両耳流れるのは好印象。
意外とホワイトノイズも少なく、ソニー ICF-B09と同じぐらいだった。
ただし、スピーカー同様小音量域の変化が急なので、音量調整は注意しよう。

 

選局は同調ランプを目安に行う。
アナログのため、ピッタリ合わないとノイズが入ったり、温度や湿度によってズレたりするが、感度が悪い訳ではない。
また、個体差もあるだろうけど、表示ずれはあまりなかった。
FMなら適当なワイヤーや物干し竿と繋いだりすれば遠方の局も聞けたりする。
AMは取説通り、向きによって感度が変化するため、放送局の方角を知っておきたいところ。
筆者宅の場合、AMは全部ワイドFMでも聞けたので、FMしか使っていなかった。

 

バッテリー電圧が低下すると、まず同調ランプが消え、次に電源ランプが消える。
この状態でもラジオは聞こえるが、少しずつ音量が小さくなり、最後には電源が切れる。
音量次第だが、FMでも内蔵バッテリーだけで60分近く持ったりするから、防災ラジオとしてはトップクラスに発電効率がいい。

 

 

 

<ライト>
明るさはこんな感じ。右が本品で、左はソニー ICF-B09。

スポット範囲が広いため、室内での光源確保には使いやすい。
まぁ明かりのない野外で使用するには心許さないので、外用ライトは別で用意しておこう。
連続点灯時間は、内蔵バッテリーで約24分と結構持つのが高評価。

 

ただし、ライト点灯中はラジオにえげつないノイズが乗るので、併用はできないと思った方がいい。
これは推測だが、LEDを点灯させるために必要な電圧(順方向電圧Vf)を確保するために昇圧回路が組み込まれていると思われる。
昇圧回路を使わないようにしようとすると電池が3本以上必要になったりするから、これについては仕方ない。
本品はあくまでラジオであり、オマケ要素のために単四乾電池×3とかいうクソ仕様にならなかっただけマシだと思っておこう。

 

 

 

<サイレン>
スイッチを入にすると、最大音量でサイレン音が鳴る。
ただ、サイレンとしての音量は小さめで、車の非常用サイレンの前には無力なので、役に立つことはほぼ無い。

 

面白いことに、音量だけでなく周波数も電圧に左右されていて、通常時はウォンウォン鳴っているが、電圧が下がってくると低くなっていき、最終的にはジジジジ鳴る。
電池を使い切るのに使えるかも。

 

 


<携帯充電>
やるだけ無駄だと思っているが、この機能を目当てにしている人も多いと思うので、現実見せるためにも携帯充電能力を調査してみた。
アルカリ乾電池は新品のダイソー乾電池、ニッケル水素電池は三洋時代のエネループを使用した。
充電量目安は3000mAhの機器に80%の効率で給電した場合で、実際は効率が違うだろうし、アイドル消費もあるためもっと下がるだろう。

項目 手回し発電 内蔵バッテリー アルカリ乾電池 ニッケル水素電池
最大電圧 4.80V 4.80V 4.84V 4.79V
最大電流 0.11A 0.35A 0.25A 0.28A
総電流量 110mAh/時間 3mAh 385mAh 543mAh
総電力量 0.52Wh/時間 0.01Wh 1.85Wh 2.60Wh
充電時間 気力がある限り 約1分間 約2時間 約2時間
充電量目安 4%/時間 0.1% 13% 19%

手回しがやたら軽いと思ったら、0.11Aしか流れていなかった。
どれも電流量は妙に少なく、USB2.0の規格である0.5Aですら満たしていなかった。
これはロクに携帯充電できないことを意味していて、製品によっては電流量不足で充電が始まらない場合もある。
充電できたとしても、時間がかかりまくるわ、アイドル消費もあるから充電量はこれ以下になるわでほとんど意味ないだろう。
まぁ他の製品でもせいぜい0.5A程度しか流せないので、本製品に限らず、この機能は期待するだけ無駄と言っていい。

 

 

 

<外部電源入力>
USB MicroBを使用した外部電源入力による内蔵バッテリー充電に対応しているが、充電時間の目安は特にないため、USBチェッカーを使って調査してみた。結果は以下の通り。

時間 電流
0分 0.35A
1分 0.20A
2分 0.11A
3分 0.07A
4分 0.04A
5分 0.03A
6分 0.02A
7分 0.00A

約7分で充電完了したが、3分辺りでほぼ充電完了と言っていい。
ちなみに、コンデンサには過充電という概念自体存在しないため、繋ぎっぱなしでも問題はないはず。
まぁ手回しでも150回ぐらい回せば充電完了になるため、外部電源入力を使うことは皆無だろう。
疑似ACアダプターとして使用できるが、いい電源を使用しないとノイズが乗るため、普段使いは乾電池一択。

 

 

 

<総評>
上記の通り、使用してみると細かな不満点はあるものの、防災ラジオとして必要な要素が一通り揃っている。
本製品の最大の長所は、長時間駆動と長期保存性にある。
乾電池で普段使いするも良し、災害用持ち出し袋に入れて長期間放置するも良しのため、防災に限らずラジオを持っていないという人は候補に入れるのもアリ。

 

余談だが、筆者がこのラジオを実家にプレゼントしたのは、毎回シビアな音量調整をするのが面倒だったため。
電源スイッチが独立またはバンド切り替えと同じで、音量調整がもっとスムーズだったら、文句なしの最高傑作になっていた。

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