昔から欲しかった電動ドライバーをようやく購入したので、紹介と評価をする。
筆者が務めている会社は電子機器の設計と製造を行っており、仕事柄ドライバーを使う機会が多い。
製品の組み立ては、生産技術部がトルク校正済みの電動ドライバーを使用する決まりになっているが、試作機や製品でもネジ外しなら生産技術部以外が行うことを認められている。
普段は各部署で所有している電動ドライバーを使用しているが、人数比で10人ぐらいが共有していることもあり、他の人に使われていたり社外に持っていかれていることも多いため、ほとんどの人が個人所有の手動ドライバーを持っている。
筆者もベッセルのファミドラ8と、ホームセンターで買った30種類ぐらいのビットを付け替えできる精密ドライバーセットをよく使用しているが、自分用の電動ドライバーが欲しくなり、Amazonで探すことにした。
最初に思い浮かんだのは、ベッセルの電ドラボール。
小型電動ドライバーの代表製品で、最近新機種が出て4種類あり、社内でもこれを使用している人は何人かいる。
国内メーカーを含めて類似製品がいくらでもあるが、スペックを見た感じ、どれも筆者の使用環境に対してトルクが強すぎることが分かった。
下記サイトに材質別の最大トルクが載っていて、筆者が主に使用するのは鉄/アルミ/ステンレスのM2.6とM3であり、電ドラでの適正締付トルクは75%ぐらいのため、0.26~0.7Nmぐらいを細かく調整できるのが理想。
一方、電ドラボールはトルクが最も弱いハイスピードでも0.4Nmあり、トルク調整できる電ドラボールプラスは1.2/1.6/2.0Nmと、どれにしてもトルクが過剰。
そういえば、電ドラボールを使っている人のネジを緩めようとするとやたら固く感じたり、ネジ部が削れてバカ穴になっちゃってることがよくあったな。
まとめサイトやYouTubeレビューを見ると、トルクが高い方がいいみたいな論調をよく見るけど、高トルクが必要なのは大型のネジ締めやドリルやビス打ちをするときであり、そういう用途なら遅くてトルクが中途半端な電ドラなんかよりも、ドリルドライバーを使うべきだと思う。
トルク調整の一番のメリットは、一定のトルクで締められることによるスピードと品質の安定であり、過剰トルクの電動ドライバーのせいでネジ部をつぶしたり、寸止めして最後は手回しなんて本末転倒だ。
という訳で、低トルク帯の調整が細かくできそうなものを探すことにした。
いろいろと調べた結果、こちらが丁度良さそうだった。
公称トルクが1で0.1Nmであり、4でも1.1Nmのため細かく調整できる。
電ドラボールより120gぐらい重いし、トルクの精度や軸ブレが気になるところだが、これより細かく調整できるのになると、会社で使っているパナソニックのスティック型ドリルドライバーとかが候補になってくる。
また、丁度プライムデーで3200円ぐらいだったためこれに決めた。
ビットはホームセンターで購入するつもりなので、ビットの種類が少ない方にした。
こちらが実物。


裏面におかしな日本語はないのに、中華製品感強いのは何でだろう?
無負荷時の回転数は400rpmで、電ドラボールプラスの高速と同じ速度。
電動トルクは1~7とMAXの8段階で、ボールタイプの電ドラは1~3種類だから圧倒的。
手動トルクは10Nmで、初代電ドラボールと同じ。
電池容量は2000mAhで、電ドラボールより2.5倍も大きい。
電ドラボールより大きく重いけど、その分機能は充実してるかな。
側面のグレーなのは滑り止めのラバー。
底面は充電口でこんな感じ。

充電はUSB TypeCで、充電時間から察するに5V1Aのみ対応でPDには対応していない。
無理にPD充電器に繋ぐと壊れるかもしれないので、無難にA to Cの5V充電器を使おう。
こちらが駆動軸部分。

6.35mmの六角軸で、マグネットチャックになっている。
スリーブチャックは外れにくいけど、けっこう上下に動いちゃうからこっちのほうが好き。
あと、スリーブチャックは両頭タイプが使えるという利点もあるが、軸がどうしても太くなってしまう。
奥まったところにあるネジに届かなかったり削ってしまうことがあるので、筆者は圧倒的に片頭派だ。
差し込みは1.3cmぐらいと浅めで、2.5cmのビットも問題なく使用できた。
また、LEDが4個透けて見えていて、動作中に光るようになっている。
付属品は収納用の巾着袋と+2と-6の65mmビットとストラップに、あとなぜか紙やすりが入っていた。
マイナスはこじ開け用途で使えなくはないけど、プラスは国内メーカーしか信用していないので不要かな。
こちらが実際に動かした動画。
電源ボタンを1秒ほど押すと電源ランプが光り、回転ボタンを押すと動くようになる。
回転は正転、逆転どちらも可能。
回転中はLEDが光り、停止から1.5秒で暗くなっていき、3秒で消灯する。
電源ボタンを3秒以上長押しするか15分以上無操作だと、電源が切れるようになっている。
回転速度はこんな感じ。
公称通りの400rpmなのかは分からないが、けっこう早いと思う。
ボタンを離してからもちょっと動いているけど、キビキビ反応するので回し過ぎることはほとんどないかな。
軸ブレを評価してみる。まずは+1の65mmビット。
意外にも軸ブレはほぼ無くて、会社のパナ電ドラより優秀。
次は+1の100mmビット。
僅かに軸ブレしているけどかなり優秀だと思う。
他の100mmビットだとけっこう軸ブレしたのもあるけど、ビット自体が曲がっているようだった。
次はドリルチャック変換と1.6mmドリル。
変換を挟んでいることもあり、さすがにけっこう軸ブレしている。
基板の穴あけに使うのは厳しいかもな(USB DACの穴あけはこれより軸ブレひどいのを使ったけど)。
お待ちかねのトルク調整機能を確認してみる。
無理やり回転しないようにして動かすとこのようになる。
クラッチが外れて空回りするようになっていて、社内で使う電ドラは停止するタイプなので、カタカタ音で周囲に驚かれた。
当然ながら、トルクを上げると音がもっとデカくなる。
1のトルクは激弱だけど、油断していると意外と持っていかれそうになる。
MAXになると、片手だと簡単に持っていかれるレベルのため、けっこうトルク高そう。
会社の厚意でトルクメーターを借りられたので、実際のトルクがどれぐらいか調べてみた。
| レベル | 公称トルク | 実測トルク | 鉄 | ステンレス | アルミ |
| 1 | 0.10 Nm | 0.16 Nm | M2 | M2.6 | |
| 2 | 不明 | 0.36 Nm | M2.6 | M3 | |
| 3 | 不明 | 0.48 Nm | M2.6 | M3 | |
| 4 | 1.10 Nm | 0.69 Nm | M3 | ||
| 5 | 不明 | 0.88 Nm | M4 | ||
| 6 | 不明 | 1.06 Nm | M4 | ||
| 7 | 不明 | 1.24 Nm | M4 | M5 | |
| MAX | 5.00 Nm | 2.51 Nm | M5 | M5 | M6 |
材質別トルク目安は、最大トルクの50%~80%ぐらいに収まるようにしている。
最小トルクは公称より1.6倍あり、最大トルクは公称の半分ぐらいのためかなり誤差大きい。
まぁ他社の製品もそこまで正確じゃないだろうけど。
とはいえ、最小トルクが思ったより大きい以外むしろ狙い通りで、M2.6~M5ぐらいならいい感じに使えることが分かった。
個体差はけっこうありそうなので、トルクメーターがない場合は低トルクから徐々に上げていって、材質やサイズ毎に最適なトルクを選択すべし。
想像以上に筆者のニーズに合っていたので大満足だが、いくつか欠点もある。
1つ目は電ドラボールに比べて明らかに大きく重いこと。
特に全長は5cmぐらい長いので、収納性や狭い場所での作業性は明らかに落ちる。
重さも282gと電ドラボールより120gぐらい重いので、ずっしり感じる。
リチウムイオンバッテリーは18650を使っていると思われるが、容量減ってもいいからもう少し短くしてほしかった。
2つ目はグリップ力が弱いこと。
側面に滑り止めのラバーがあるとはいえ凹凸が少なく丸いため、ボールタイプやガンタイプと比べてしっかり握り込んでいないと低トルクでも持っていかれそうになる。
特にMAXは両手じゃないときつい。押し込みも力を入れにくいので、ビス打ちではネジをなめてしまいやすい。
あと、ストラップ穴ぐらいしか止まる所ないから転がって行っちゃう。
3つ目は電源が入っているか分かりにくいこと。
電源ボタンを3秒以上長押しするか15分以上無操作だと電源が切れるが、電源ランプは停止から3秒で消えるため、席を外したりとかで数分放置していると、電源が入っているか分からなくなることが何度もあった。
まぁ電源ボタンを押せばすぐに分かるが、押し心地あまりよくないので不便に感じる。
モーターの消費電力と比べたらLEDの消費電力なんて僅かなので、点きっぱなしでも問題なかったと思う。
最後にオマケで、筆者のドライバー収納袋の紹介。

電ドラとボールグリップ、巾着の中に各種ビットを入れている。

ビットは左から順に+00、+0、細い+1、65mmと100mmの+1、65mmと100mmの+2、両頭の+3、-4、ドリルチャック変換の10本。
+3だけ両頭だけど、片頭タイプは見つからなかった。
まぁ、片頭だったとしても軸の太さは変わらないだろうから関係ないかな。
ホームセンターのラインナップの問題で、ベッセルとアネックスのビットが混在していて、同じ+1なのに色が違うのが個人的に不満。
何でホームセンターでよく見る2大メーカーなのに、+1と+2の色が逆なのよ。
ちなみに、この巾着が電ドラに付属していたやつで、感触が妙にカサカサしている。
適当に放り込んでいるせいで、アネックスのビットの塗装が少し剥がれている。
仕切り付きの収納袋を作ろうかな。
