各社が出している手回し発電付きの防災ラジオについて最適なのはどれか、筆者の独断と偏見で考察してみた。
<はじめに>
先に言っておくと、手回し発電をするぐらいなら、アナログラジオ(中身がバリコンのやつ)と10年保つ乾電池を買い込んだ方がよっぽども良い。
なんせ、手回し発電では1分間回して(これが意外とシンドイ)5〜50分程度しか持たないが、アナログラジオなら単三乾電池2本で100時間以上は持つからだ。
ライトやサイレンなんてそれぞれ100均で買えって話だし、携帯充電なんてガラケー時代でも役に立たなかったのに、今や電池の容量、消費共に当時の5倍ぐらいになってしまったため、ヘタしたらホーム画面表示だけで消費が上回るレベルだ。
せいぜい、乾電池を使用したモバイルバッテリー機能があるやつなら、使えない事もないってところ。
まぁ十数%しか充電できないから、ラジオに使ったほうが遥かにマシだが。
それでも、いざという時に発電できるのは頼もしいし、こういうガジェット好きにとしてはロマンがあるため、防災用に1つは持っておきたいところ。
という訳で、国内メーカーが出している防災ラジオの長所と短所を挙げ、どれが最適解か考察してみた。
<防災ラジオに求めるスペック>
・バッテリーは電気二重層コンデンサ>リチウムイオン電池>>>ニッケル水素電池
電気二重層コンデンサは長寿命かつ、空のまま放置してもほとんど劣化しないのが強み。容量は少ないけど、1〜2分手回しして都度使用するのにちょうどいい。ってか何分間も回そうとは思えない。
リチウムイオン電池は容量の大きさが魅力。空のまま放置すると寿命が一気に縮まるが、USB充電できる機器で普段使いする場合なら選択肢に入れるのもアリ。まぁリチウムイオン電池を使っている機器に限って消費電力の多いDSPタイプばかりなのだが。
ニッケル水素電池は容量、寿命ともに中途半端。あと重い。安全性は高いけどね。USB充電に対応していない製品が多く、手回し発電では何十分と回さないと満充電にできない、でも空のまま放置すると寿命が一気に縮まるなど、管理に気をつけないといけない。
まぁ乾電池運用が1番だ。
・ラジオはアナログ一択
理由は消費電力が低く、長時間運用できるから。
電圧が下がってきても、音量を上げれば結構粘ってくれるのも評価できる。
デジタル(DSP)は消費電力が大きすぎるし、一定電圧以下で動かなくなるため防災ラジオとしてはほぼ論外。
最近のラジオは、見た目はアナログでも中身はDSPのことが多いので、防災用として探すときは駆動時間を見るべし。
・単三乾電池2本タイプが理想
単四乾電池は容量が半分以下だし、奇数本使うやつは何かと不便。
単三乾電池2本なら、そこら辺のリモコンや時計、おもちゃからも流用できる。
・ライトは要らないとまでは言わないが、ほとんどが室内灯としてなら使える程度でアテにするものではない。100均で買え。
・防水(IPX4以上)が理想だが、せめて防滴(IPX3)は欲しいところ。
・その他の機能は要らん
サイレン | 車の非常用サイレンの前では無力。 誤動作もあるし、無い方がいいレベル。 100均で防犯ブザーかホイッスル買え。 |
携帯充電 |
諦めろ。 どうしても給電したけりゃ、足漕ぎタイプを買えばダイエットにもなるよ。 |
ソーラー発電 |
面積が命なのに天面にちょこんとあるだけ。 |
<エントリー>
今回エントリーしたのは、国内有名メーカーが出している以下の製品。
- ソニー ICF-B09
- パナソニック RF-TJ20
- 東芝 TY-JKR5
- 東芝 TY-JKR6
- アイリスオーヤマ JTL-29
- オーム電機 RAD-M799N
- 山善 YTM-R100
- 無印良品 MJ-RR1
※リンクは全てメーカー商品紹介へのリンク
加点項目はほぼラジオの連続使用時間などの性能で、それ以外はほぼ減点方式という超尖った評価方法のため、ライトや携帯充電については他を当たっていただきたい。
筆者が持っているのはソニー ICF-B09と山善 YTM-R100だけのため、他はカタログや取説からの評価になる。
防災ラジオの定番だが、設計が古いせいか欠点も多い製品。短所は以下の通り。
- 高い。実売1万円近くするし、修理費も高い。これは分解してみて分かったが、ネジの数と種類が多い、基板が多い、組み立てが複雑なのが問題で、ブランド料ではなさそう。設計を見直せば他社製品と同じぐらいまでコストカットできるはず。
- 重い。これは上と同じ理由。
- ニッケル水素電池が使用されているし、外部電源入力できない。ICF-B99ならできるのになんでこれには入れなかった?
- ライトが誤作動しやすい。特に内蔵バッテリーが勝手に消費されやすいため、いつの間にか充電できなくなったっていうのは大体これのせい。
一方で、以下のような長所がある。
- 発電効率が最も高く、手回し1分間でFMなら約50分使用可能。
- 山善 YTM-R100と比べると感度は明らかに高いし、音量調整もスムーズ。
- 単三×2本でFMは約80時間使用可能のため、普段使いしやすい。もちろん音量次第ではもっと持つ。
- 防滴と書いてあるが、IPX4相当(つまり防水)。
- ソニー印のホイッスルが付いてくる(筆者は本体のみジャンクで入手したため持ってない)。
総評すると、ラジオの性能は申し分ないが、それ以外の機能や使い勝手はイマイチといったところ。
余談だが、バッテリー劣化のジャンクで入手したこれに電気二重層コンデンサを換装したため、別記事でレビューする予定。
<パナソニック RF-TJ20>
論外その1。
某所では高評価が多いが、その中にあるボロクソレビューがとても共感できる内容だった。
それにならい、ひたすら短所を書き連ねてみる。
- 何よりも連続使用時間が短い。手回し1分間でAM/FM共に14分しか聞けないし、乾電池でも24時間だけ。
- その乾電池は単四×3本という中途半端さ。72時間の壁を超えるには最低9本必要。
- ACアダプタ等はないため、普段使いするならすぐ切れる単四乾電池のみ。
- 内蔵電池はニッケル水素電池×4で、手回しでしか充電できない。
- デジタル選局のくせにプリセットなし。放送局表示はもちろんなし。
- スピーカーは2つあるがモノラル。完全に見た目だけ。
- 元々オマケだが、ライトとサイレンが同じスイッチのため、誤操作の可能性がある。一応サイレンは少しずつ大きくなる設計らしいが、そんなことするなら別スイッチにすれば?
- おそらく防滴もない。まあイヤホンジャックが斜め上向いているぐらいだしな。
長所については、ラジカセのミニチュア版みたいでカワイイ。以上。
<東芝 TY-JKR5>
- 単四×2本が唯一の欠点。それでもFMで約60時間と頑張っている。
- 正面からだと手回し発電が見えないため、普段使いにも使えるデザインしている。
- 今回エントリーした中で最も軽く、200gを切っている。
- 防水というのも頼れる。
- まだ出回っているが、下記後継機が出てディスコンになったようで、取り扱いが無くなってきている。
説明書や他の人のレビューを見るとかなり割り切った仕様のようだが、筆者としては余計なものがないという認識のため、むしろ高評価。
総評としては、単四×2本以外はほぼ理想。
後継機は単三×2にするだけで1位間違いなしだったのだが・・・
<東芝 TY-JKR6>
論外その2。
なぜパナソニックと同じ誤ちを冒してしまったのか。
電池持ちが半分以下になったことに、誰も疑問に思わなかったのか?
一応最新機種のため、パナソニック RF-TJ20と比べると以下のような利点がある。
- 電源は電気二重層コンデンサか単四×2本。
- 乾電池の連続使用時間は30時間と若干長い。1本あたりなら約2倍。
- AM/FM各3つまでプリセットできる。
- 防水は継続。
DSPになった時点で防災ラジオとしては大幅劣化だが、その中では頑張っていると思う。
単三×2になれば少なく見積もっても2倍以上は持つので、論外からは脱出できたんだがな。
<アイリスオーヤマ JTL-29>
論外その3。
リチウムイオン電池を使用していて、いくつか長所はあるが短所が致命的。長所は以下の通り。>
- バッテリー容量は2,850mAhと今回エントリーした中では圧倒的。スマホ0.7回分は給充電できるかな。
- IPX3で、雨天使用可能。
- 重量は300gと、サイズにしてはそれほど重くない。
一方の致命的な短所は以下の通り。
- 発電効率は最低クラスで、手回し1分間でFMは約5~7分しか持たない。
- 満充電でも約25時間(ヘタしたらスマホにラジコの方が持つのでは?)のため、中身はDSPと思われる。
- イヤホンジャックなし。
- 充電時間が長い。手回しでは約4.5~5時間(正気か?)、ソーラーでは約90~100時間(ないも同然だろ)、USBでも約4~6時間。
- 乾電池不可。なにげにこれが一番きつい。
ヘタに防災用とか言って無駄な機能をいろいろと詰め込まず、充電式ラジオとして作った方が良かったのでは?
これが容量そのままで100時間近く使えていたら、普段使い用として候補になってた。
市販のポケットラジオってほとんどが乾電池仕様で、リチウムイオン電池仕様ってあまりないんだよね。
今や100均のハンディファンですらリチウムイオン電池使っているのにな(500円ぐらいするけど)。
<オーム電機 RAD-M799N>
論外その4。
大まかな仕様はパナソニック RF-TJ20と同じで、ガワ違いと思われる。
外部電源入力できるのはいいけど、8時間しか持たない。
同社のポケットラジオと乾電池を買い込んだ方がはるかにいい。
ほぼ理想。
単三×2でFMは約120時間と圧倒的で、電圧が下がってもボリュームを上げることで結構粘ってくれる。
実際に使用してみると細かな欠点はあるものの、現時点では最適解と思われる。
別記事で個別レビューする予定。
<無印良品 MJ-RR1>
論外その5。
今回エントリーした中どころか、防災ラジオ全般で見ても最底辺のゴミ。
だいたいの欠点はパナソニック RF-TJ20と同じだが、さらにアホな点は以下の通り。
- 今回エントリーした中で唯一AMラジオなし(ワイドFMには対応している)。
- 発電効率は最低クラスで、手回し3分間でラジオは約18分しか持たない。
- 満充電したけりゃ90分以上回せ。外部電源入力なんかない。
- 時計が付いているせいで満充電でも1年で電池切れ。上記の手回し3分だと10時間で電池切れ。
- デカブツのくせに単四×3本仕様。
- ライトがないのは悪いわけではないが、液晶のバックライトもないため暗いと何も見えない。さらに言うとボタンに突起なし。
- 縦長のくせに液晶は天面にあるとか誰が見るんだ?
- アンテナは真上に伸ばせない。オシャレ(笑)
- ならばアンテナが真上になり、液晶が正面に来るように倒すと、スピーカーが下を向くアタオカ設計。
唯一の長所は手回しハンドルをグーで握れること。
まぁ手回しで発電できる量なんてたかが知れてるからほぼ無意味だが。
<項目別ランキング>
ラジオ機能だけに絞ってランキングを作成してみた。
手回し発電の回転数は取説を参照した。
駆動時間については音量によって大きく異なるので、これが絶対ではないことに注意してもらいたい。
・手回し発電効率ランキング
順位 | 製品 | 推奨手回し回転数 | FM連続使用時間 | |
1位 | ソニー ICF-B09 | 120回転×1分 | 50分 | 50分/1分 |
2位 | 東芝 TY-JKR5 | 150~180回転×1分 | 40分 | 40分/1分 |
3位 | 山善 YTM-R100 | 150回転×1分※ | 40分 | 40分/1分 |
4位 | 東芝 TY-JKR6 | 150~180回転×1分 | 15分 | 15分/1分 |
5位 | パナソニック RF-TJ20 | 120回転×1分 | 14分 | 14分/1分 |
6位 | オーム電機 RAD-M799N | 120回転×3分 | 30分 | 10分/1分 |
7位 | 無印良品 MJ-RR1 | 120回転×3分 | 18分 | 6分/1分 |
8位 | アイリスオーヤマ JTL-29 | 130回転×1分 | 5~7分 | 5~7分/1分 |
※取説だと2分間回して満充電だが、実測では1分間で満充電になった。
アナログかDSPかで効率が大きく異なっていた。
4位以下は全てDSP機で、手回し発電運用することを考えていないことがよく分かる。
・乾電池駆動時間ランキング
順位 | 製品 | 乾電池仕様 | FM連続使用時間 | 乾電池1本あたり |
1位 | 山善 YTM-R100 | 単三×2 | 120時間 | 60時間 |
2位 | ソニー ICF-B09 | 単三×2 | 80時間 | 40時間 |
3位 | 東芝 TY-JKR5 | 単四×2 | 60時間 | 30時間 |
4位 | 東芝 TY-JKR6 | 単四×2 | 30時間 | 15時間 |
5位 | パナソニック RF-TJ20 | 単四×3 | 24時間 | 8時間 |
5位 | 無印良品 MJ-RR1 | 単四×3 | 24時間 | 8時間 |
7位 | オーム電機 RAD-M799N | 単四×3 | 12時間 | 4時間 |
8位 | アイリスオーヤマ JTL-29 | なし | - | - |
アナログ&単三×2が最強ってことがよく分かる。
一方で単四×3勢の無能っぷりがヤバい。
東芝 TY-JKR5は単四×2だけど頑張っていて、単三×2なら1位になれたっぽい。
オーム電機 RAD-M799Nは何かの間違いか?同社のDSPポケットラジオでも単四×2で40時間近く持つぞ?
・個人的総合ランキング
順位 | 製品 | ひとこと評価 |
1位 | 山善 YTM-R100 | ほぼ理想。 |
2位 | 東芝 TY-JKR5 | 単四×2以外ほぼ理想。 |
3位 | ソニー ICF-B09 | ラジオ機能だけなら優秀。 |
4位 | 東芝 TY-JKR6 | DSPにしては頑張ってる。 |
5位 | パナソニック RF-TJ20 | ミニチュアみたいでカワイイ(笑) |
6位 | アイリスオーヤマ JTL-29 | バッテリー持ちが良くなればアリ。 |
7位 | オーム電機 RAD-M799N | バッテリー持ち短すぎ。 |
8位 | 無印良品 MJ-RR1 | オチ担当のゴミ。 |
個人的には3位(100歩譲って4位まで)は普段使いもできて買い。
とはいえ、やっぱりアナログラジオに10年持つ電池を買い込んでおくのが一番楽なのは間違いない。
手回し発電はあくまで最終手段、使わないに越したことはないと思った方がいい。
そう考えると、防災ラジオの存在意義ってほとんどないんだよね。
現在ではロマンとかガジェット好き向けといったところ。