ほんとにあった!呪いのビデオ 菊池演出期総評

 

<担当作品>

パート56 ★★★★★★★☆☆☆
パート57 ★★★★★☆☆☆☆☆
パート58 ★★★★★☆☆☆☆☆
パート59 ★★★★★☆☆☆☆☆
パート60 ★★★★★★☆☆☆☆
パート61 ★★★★★★★★☆☆
パート62 ★★★★★★☆☆☆☆
パート63 ★★★★★★★☆☆☆
パート64 ★★★★★★★★★
パート65 ★★★★★☆☆☆☆☆
パート66 ★★★★☆☆☆☆☆☆
パート67 ★★★★★★★☆☆☆
パート68 ★★★★★★★☆☆☆
パート69 ★★★★★★★★★
パート70 ★★★★★★★☆☆☆

平均:6.5

 

 

 

<評価・感想>
他の人のレビューを見ると菊池演出期の評判はあまり良くない印象がある。
確かに、投稿映像のレベルが明らかに落ちたり、1作60分前後から90分近くまで長時間化したし、その大部分はメインに占められているため、メインにハマらなければかなり退屈に思うかもしれない。
あと、パート71がなまじ成功したこともその1つだと思う。
筆者的には児玉演出期、岩澤演出期に次いで好きだった。
むしろ、レビューを書いた事で岩澤演出期よりも好きかもと思い始めている。
筆者の場合、評価の比重はメインが大きいし、特に3部作にハマることが多かったため、だいぶ高めの評価になった。
また、菊池演出には3つの武器があり、そのことに注目するようになって菊池演出期の魅力がより分かるようになった。

 

1つ目の武器は「お笑い」。
いやホラーなのにお笑いってどうなんだよと思うかも知れないが、ほん呪がシリーズ存続の危機から金字塔の地位を確立したのは、インパクトのある恐怖映像だけでなく、演出補達の頑張りやそこから生まれる笑いによるものも大きい。
ほん呪以降に生まれたホラーシリーズもほとんどの作品で名物スタッフが存在するし、あえてスタッフを排除し恐怖で勝負しているXXXは最初こそ強烈なインパクトを持っていたが、「スタッフ・検証の排除」と「投稿映像の伏線や関連性」というコンセプトが合致しておらず、自分の首を絞めている状況になってしまっている。
菊池演出期の場合は、増本くんが初期の低迷期における救世主になったし、こなれてきた後期でも阿草・川居のコントなどのシュールな笑いが盛り込まれていた。

 

2つ目の武器は「探検」。
パート60の「蛭子」以降、菊池演出をリーダーとした菊池探検隊は、様々な探検をしてきた。
以前も現地ロケは色々としてきたが、その大半はちょっと現場を見るぐらいで、探検がメインだったのは「大山家(Special1)」と「菊池失踪シリーズ(パート32~34、42~44)」ぐらい。
意外に思うかもしれないが、筆者はホラーは好きだけどオカルト知識はあまりなく、菊池演出期で取り上げられた伝承は興味深かったというのも、「探検」を評価している要因になっている。
これを支えていたのは、児玉演出期や岩澤演出期に多かった「架空の伝承」から「実在の伝承」に替わったところが大きいと思われる。
そう言えば、菊池演出期は個人情報とかが厳しくなった現代において、妙に本名&顔出ししている人が多かった。
まぁやってることは児玉演出期、岩澤演出期と大差ないが、あちらがフィクションに振り切っているのに対して、こちらは少しでもリアルにするという意図が見られた。

 

3つ目の武器は「狂気」。
ほん呪ではこれまでに様々な「恐怖」が描かれていたが、狂気でパッと思いつくのは「ニューロシス(パート15)」「悪人(パート55)」「瑕疵(パート71)」ぐらいと、意外と少ない。
それもほとんどはヒステリー系のもので、菊池演出期の狂気とはタイプが異なる。
菊池演出期の狂気は、理解不能な心の闇を描いたようなものや、舞台設定そのものがおかしいなどの静かな狂気に満ちており、それに付随する心霊現象はむしろ余計と思うものばかりだった。
振り返ってみると、菊池演出期の初期は先代、先々代のマネをしたようなものが多かった。
だが菊池演出のセンスなのか、教科書通りな劇場型や2段オチばかりで驚きがなく、本人達も怖いと思っていなかったように見えた。
そこで開き直ったのか、はたまた我を出すようになったのかは分からないが、菊池演出はパート61辺りからまともに恐怖を描くことをやめたように思う。
パート61~62では「なんでもいいから怖けりゃいいだろ」と言わんばかりの襲撃系がトップバッターで出てきたし、パート64~67辺りでは隠し事象を何本も出したり、パート67~69は「狂気」編と言っていいほど大々的に狂気を描いていた。
真っ当な恐怖を楽しみにしている視聴者からするとウケなかったと思われるが、あのままセンスのない投稿映像が続くよりかは「恐怖」を描くという意思を感じたから、筆者は高く評価している。

 

このように菊池演出期の魅力を書いてきたが、やはり投稿映像のレベルは下がったと言わざるを得ない。
児玉演出後期辺りから徐々に増えた劇場型が、菊池演出期ではスタンダードになった。
劇場型は和製ホラーによく見られる手法で、絶妙なカメラワークやさりげない前兆によって恐怖を煽るのに有効だが、ほん呪のような「素人が偶然撮影してしまった霊」に対してはその限りではない。
リアルさが落ちてしまうのもだが、前振りがあからさま過ぎて初見でもオチが丸分かりになってしまう「舞台が整い過ぎ」現象が菊池演出期では多く見られた。
特にパート60ぐらいまではそんなのばかりだったし、その後も序盤の投稿映像は舞台が整い過ぎていたから、この辺りは菊池演出のセンスだったんだろうなと思う。

 

また、岩澤演出期が演出過剰だったのに対して、菊池演出期は霊が過剰だった。
特に、バーゲンセールのように大量発生したのは菊池演出期だけと言っていい。
「遊園地(パート58)」「シリーズ監視カメラ 駐車場(パート60)」「六十六(パート66)」なんかはその典型で、特に六十六は最低でも7人出現したことで「修行僧殺されすぎだろ」と突っ込まざるを得なかった。
一応擁護すると、「スケープゴート(パート62~64)」の沙希さん以外の霊が3体なのは、沙希さんに取り憑いた巫女として説得力あったし、「続・禁忌 中編(パート68)」では、あれは霊と言うよりも儀式によって召喚された術者という感じなので、違和感はなかった。

 

あと、菊池演出期の投稿者やその友人は、やたらバカが多かった。
特に初期は、投稿者がバカの多い大学生ぐらいが多く、曰くがあるところに行ってバカみたいにハメを外してイキっておきながら、いざ霊が現れるとビビり散らすバカみたいなシチュエーションがやたら多かった。
他にも、落ちていた手鏡やぬいぐるみを持ってきたり、傘や御神体を盗んだりと、起きるべくして起きたようなシチュエーションも多かった。
よく考えてみれば菊池演出本人も、岩澤演出期までの観察眼はどこへやら、急に勘が鈍くなったりバカみたいなことをよくしていた。
今までの有能キャラは児玉、岩澤演出の脚本力だったのだろうか・・・
最後に、レビューではパート66ぐらいからバカにはバカと書くようになったが、それまでの我慢してた分を書くことができてスッキリした。

 

 

 

<おすすめ>
・パート56「シリーズ監視カメラ 商店街」
シリーズ監視カメラ×哀愁の王道パターン。
初期の菊池演出にしては珍しく、「間」を分かっている。

 

・パート57「隙間」
事象もそれなりだが、撮影者のハプニングが好き。

 

・パート58「邪心 中編」
菊池演出第1の武器「お笑い」が炸裂。
増本くんだけで★5を獲得した。

 

・パート60「蛭子」
菊池演出第2の武器「探検」の始まり。
増本くんがいい味出してる。

 

・パート61「コインロッカー」
菊池演出第3の武器「狂気」の始まり。
霊はどうでもいい。

 

・パート61「人形ノ家」
お笑いあり、探検あり、狂気ありで、菊池演出を象徴するエピソード。

 

・パート62「バッティングセンター」
こんなんビビるに決まってるじゃん。

 

・パート63「証明写真」
全体的にレベルが高い。
個人的には心霊写真が一番怖かった。

 

・パート64「トイレ」
こちらの予想をことごとく裏切る怒涛の展開。
エピソードもいい感じ。

 

・パート62~64「スケープゴート
考察が楽しい3部作。
沙希さんの正体にいつ気付くかで評価が分かれる。

 

・パート67「奇怪な過去」
ゴミ調査にウネウネしたアホという一見ハズレエピソードだが、メインルームの狂気に気付くと一気に怖くなる、奇怪なエピソード。

 

・パート67「合唱」
一見すると地味だが、最後の最後に特大サプライズが待っている。

 

・パート69「消える」
菊池演出得意の狂気シリーズ。
事象がないのにインパクト抜群。

 

・パート69「隙間」
1つ目の「目が合っちゃった・・・」感が絶妙。
2つ目も「やめとけよ・・・」「ほらいるいる!早く気付いてくれ!!」と思うこと間違いなしなナイスシチュエーション。

 

・パート67~69「禁忌」
歴代最恐の狂気とどんでん返しが絶妙な、菊池演出の集大成。

 

 


<主なスタッフ・出演者>
中村義洋
シリーズおなじみのナレーション。
菊池演出期では比較的地味ながら、エピソードの盛り上げに貢献した。

 

・菊池宣秀
とうとう7代目演出にまで登り詰めた元演出補。
無駄に声がデカく、緊張感を台無しにしたり無駄に圧を感じる3代目パワハラ演出でもある。
厳しい滝行(笑)の果てに、邪念ではなく人の心を無にしてしまったようで、サイコパスな言動が増えた。
これまでの観察眼は何処へやらってぐらい鈍感化したが、やるときはやる男。

 

・川居尚美
パート80までほぼレギュラー出演する名演出補の1人。
だが菊池演出の趣味なのか、菊池探検隊に参加することはあまりなく事務作業メインだった。
ようやく参加できた六十六ではその鬱憤を晴らすべく、今野君のピンチにいち早く駆け付け、あらかじめ防水ズボンを履いておく用意周到さで有能っぷりを知らしめた(皮肉)。

 

・森澤透馬
菊池演出初期から登場した演出補で、同期の増本くんを菊池と共にアゴで使い、自分は常に安全圏にいた。
パート56を見るに、けっこうビビりだったので逃げてただけかも。
増本くんの退場と共にしばらく裏方に回っていたが、「禁忌(パート67~69)」編で再登場し、狂気の大スクープを掴んだ。
その経験が活きたのか、現在はホラーやアイドル作品の監督業を行っている。

 

・増本竜馬
のび太のような容姿と寝癖が特徴的な演出補。
いかにもないじられキャラで、菊池演出初期の不調を笑いで救った。
菊池や森澤のパワハラで何度もピンチに遭い、2度の死亡フラグの果てにとうとう退場。
彼は今どうしているんだろう・・・まさか籐屋敷みたいなことになっていないよな!?と思い検索したところ、現在は監督業を行っているようで、ホラーモキュメンタリー界の大物達が集結した「心霊マスターテープ」に、心霊ディレクターという肩書で菊池と共演を果たした。

 

・山下洋助
新菊池探検隊のアゴヒゲを生やしている方。
基本的にビビりで、菊池の提案に対して消極的だったがいつも押し切られていた。
よくこけるが、何だかんだ結果を残す男。

 

・今野恭成
新菊池探検隊の影が薄い方。
(99%菊池のパワハラによる)沼への入水事件後は裏方に回った。
実は演出補になる前から監督業を行っており、ほん呪出演以降はホラーにも手を出している。
何気に菊池演出期の演出補は優秀な人材が多い。

 

・佐藤千尋
スケープゴート(パート62~64)」編に登場した女性演出補。
事務要員として入ったと思われるが、いけると判断されたのか、何度か顔出しした。

 

・阿草祐己
川居と同期で、パート55を最後に製作委員会を抜けたと思われていたが、「禁忌」編で復活した。
彼に与えられた役割は英語をしゃべることと川居にケンカを売ることで、その役割をしっかり果たした。

 

・熊倉健一
ビゲメガネ。空気。

 

・北村俊樹
トリのパート70にのみ登場した演出補。
追跡中にこけたり、ヒルに噛まれてお腹を晒したりと、ポッチャリキャラとして爪痕を残した。

 

・川上悠
wikiに名前載ってるけど出番あった?

 

・石川将彦
「禁忌」編の全ての元凶で、大学時代の後輩を「○女っぽい」という理由で勝手に売り渡したサイコ野郎。

 

・平塚幾子(仮)
「禁忌」編の黒幕で、生身の人間で唯一恐怖度★6を獲得した狂気のババア。